9. となりの恋人

9. となりの恋人

課題:おじさん

ジャンル:ラブコメ

 

人物

遠藤修司(48)タクシー運転手
遠藤勇佑(18)修司の父
古谷美奈(18)修司の恋人
古谷浩三郎(52)美奈の父

 

本文

〇遠藤家・台所
 台所に立つ遠藤修司(48)の後ろ姿。
 修司は手際よく料理を作っている。

 

〇同・勇佑の部屋
 段ボール箱が積んである。
 遠藤勇佑(18)が、引っ越し準備の手を止め、写真の束を見ている。
 ドアをノックする音。

 

勇佑「はーい」
修司の声「昼飯できたぞ」

 

 ドアを開けて中に入ってくる修司。

 

修司「準備できたか?」
勇佑「まあ、だいたいね」

 

 修司が勇佑の見ている写真を覗き込む。

 

勇佑「見てよこれ、父さん若ーい」

 

 若々しく髪がふさふさの修司(33)と、勇佑(3)、古谷美奈(3)が遊園地で遊んでいる写真。

 

勇佑「それが今じゃ頭も薄くなってさ」

 

 いたずらっぽく笑う勇佑。

 

修司「いいから冷めないうちに食べろよ」
勇佑「はーい」

 

〇同・ダイニング
 修司と勇佑が向かい合って食事をしている。

 

勇佑「父さんは本当に料理が上手いよな。お母さんがいる家より美味しいかもしれない」
修司「ん、そうか」
勇佑「今日、月曜だけど夜勤なの?」
修司「ああ」
勇佑「もうタクシーの仕事やめろよ。俺のために時間の融通が利く仕事をって会社員やめちゃってさ。大学行ったら俺バイトするから。」
修司「お前はそんなこと気にせず勉強に専念しろ」
勇佑「再婚でもすれば?もう父さんの自由に生きていいんだぜ」

 

 修司、食べ物でむせる。

 

勇佑「あれ?否定しないの?誰かいるなら紹介しろよ」

 

 修司、咳払いしてもくもくと食べる。
 スマホのメッセージ着信音。
 勇佑スマホを見る。

 

勇佑「よし」

 

 勇佑、少し顔をあからめ、こぶしを握る。

 

勇佑「ちょっと昼から出かけてくるよ」

 

〇遠藤家・外観
 似た住宅が並ぶ住宅街。
 玄関前には小さな庭と駐車場。
 家庭菜園の手入れをする修司。
 隣りの家の駐車場では古谷浩三郎(53)が洗車をしている。
 浩三郎が修司に話しかける。

 

浩三郎「引っ越しはいつでしたっけ?」
修司「水曜です」
浩三郎「じゃあもうすぐですな。それにしても帝都大学合格なんて、すごいですわ。
 遠藤さんの支えあってこそですな」
修司「いや…私はそんな…古谷さんにも小さいころから可愛がっていただいて」

 

 古谷家の玄関から、古谷美奈(18)が出てくる。

 

浩三郎「出掛けるのか?」

 

 美奈、浩三郎と修司を見るが、ぷぃっとそっぽを向き出掛けていく。

 

浩三郎「こら、挨拶せんか!まったく、もう思春期も過ぎてる頃なのに」
修司「ははは……」
浩三郎「それにしても、勇佑が東京に行ったら美奈も寂しくなるでしょうな。
 何しろ物心ついた頃からずっと一緒。このままだと遠藤さんと親族になりそうだ、がっはっは」

 

 無言で美奈が去った方向を見る修司。

 

〇映画館の前(夜)
 勇佑と美奈が二人で立っている。

 

勇佑「遅くなっちゃったな」
美奈「勇佑と二人で映画見るのも最後だね」
勇佑「何言ってんだ、休みには帰ってくるよ。
 それより、今日誘ったのは、話があるんだ」

 

 美奈、黙ってうつむく。
 タクシーがやって来て、勇佑たちのそばへ止まる。
 運転席の窓が開き、修司が顔を出して、

 

修司「勇佑、美奈ちゃん、一緒だったのか」

 

 勇佑と美奈は車の側に行く。

 

勇佑「父さん、ちょうど良かった。送ってよ」

 

 修司が車から降りる。
 美奈が修司に駆け寄り抱き着く。
 美奈は勇佑に向かって

 

美奈「私、おじさんが好き」
勇佑「は?」
美奈「おじさんが好きなの!」
修司「美奈ちゃん、それは…」
美奈「いつまで待てばいいの?18歳になるまで待てって言って、こんどは勇佑が大学受かるまでって、一体いつまで待てばいいの?」
勇佑「ちょっと待って、どういう事だよ?」
美奈「私、言ってたじゃん、子供の頃からおじさんと結婚するって!」
勇佑「マジだったのかよ!?嘘だろ?父さんも知ってたのかよ??」
修司「勇佑……説明するから…」

 

(ペラ10枚)

 

講評

人間関係がとてもよくできているシナリオです。