8. きみのマイスター

8. きみのマイスター

課題:万年筆

ジャンル:ブラックコメディ

 

人物

店長(52)コンビニ店長
男(30)強盗
グェン(23)コンビニバイト

 

本文

〇コンビニ外観(夜)
 閑静な住宅街。
 灯りがともっているコンビニ。
 コンビニ前の駐車場にも道路にも車はない。
 敷地の一角に男(30)の黒い影がある。

 

〇コンビニ中(夜)
 グェン(23)が陳列棚の品物を整理している。
 グェンは小柄で褐色の東南アジア系。
 奥の事務所から店長(52)が出てくる。

 

店長「そろそろ3時だな、休憩していいよ」
グェン「ワカリマシタ、テンチョウ」

 

 自動ドアの音楽が鳴る。
 グエンはその方向を見る。
 帽子を深くかぶった、黒づくめの男が入ってくる。
 男はグェンに近づいて、グェンを睨む。

 

グェン「ナニカオサガシ…?」

 

 男はいきなりグェンの後ろに回り、首に腕を巻き付け、抱え込む。

 

男「動くな!」
店長「グェン君!」

 

 グェンは男の手を外そうと手をかける。

 

グェン「ドウシヨウ、テンチョウ…」

 

 困った顔のグェン。
 男は自分のポケットに手を入れ、中から万年筆を取り出す。
 片手でキャップを外す。
 キャップは床に落ち、弾んでレジの方向に転がる。
 男はペン先をグェンの首に突き付ける。

 

男「こっ、殺すぞ!金を出せ!」
店長「ま、待て……ん?」」

 

 店長は、恐る恐るレジから出てきて、転がっているキャップを拾う。

 

店長「こ、これはもしやモンブランマイスターシュテック146Pt9501!」
グェン「ナンデスカ?」
店長「貴重な万年筆だよ。ここでお目にかかれるとは……」
グエン「タカイ?」
男「うるせぇ!刺すぞ!」

 

 男、万年筆をグェンの首に刺そうと振り上げる。

 

店長「うわー待て待て、そんなことしたらペン先が……。
 それじゃ殺せやしないよ。落ち着け、事情を聞こうじゃないか。
 警察には届けないから…」
男「黙れ!これには消毒液が入っているんだ!」
店長「何だって?万年筆の中が痛むじゃないか!
 早く洗浄しないと…」
グェン「ボクヨリ、ダイジミタイネ」
店長「いや、だってグエン君、君は…」

 

 グエンが男の腕をつかみ、背負い投げをして床に叩きつけ、ニーオンザーベリーの体制で男を抑え込む。

 

男「ぐぁっ」
店長「グェン君はアジア最強暗殺格闘技と言われるシラットのチャンピオンなんだよ」
グェン「オキャクサンニ、ボウリョク、ヨクナイダケド、ショガナイ、スイマセン」

 

〇同・事務所(夜)
 コンビニレジ裏の事務室。
 応接セットに向かい合って座る男と店長。
 机の上には水の入ったコップに浸してある万年筆。
 二人にお茶を出すグェン。

 

店長「落ち着いたかね?」

 

 男は顔を手で覆い、すすり泣いている。

 

男「実は、闇金に借金が……」
店長「それよりこのマイスターだけどさ」

 

 男は顔を上げる。
 ワクワクした表情の店長。

 

店長「なぜ君がこんなすごいものを持ってるの?
 ぜひ聞かせてくれ。」
グェン「イクラデ、ウレル?」
店長「いいから君はレジに出ていなさい」

 

(ペラ7枚)

 

講評

とても面白い題材ですね。店長の万年筆愛が伝わります。
アクションシーンも良いですよ。
※主要人物には全てフルネームをつけてください、大事な作業です。